特別企画 知的財産権 Q&A No.1
会報FROM JJDA 2009年4月号より
<デザインの保護>
<Q.質問>
先輩から重要なデザインは保護しておいた方がよいと聞いたのですが、どのような制度があるのでしょうか? 費用もかかるようですので、すべてのデザインを登録することはできないと思いますが…
<A.回答>
「デザインを保護することができる制度」というのは,ある人が創作したジュエリーのデザインについて,他人が模倣したデザインでジュエリーを作成する行為に対して,止めるように求めることができる法的権利(差止請求権といいます)があるのか,ということに他なりません。このような権利としては,意匠法が規定する意匠権と著作権法が規定する著作権が考えられます。
著作権については,出願等の何らの手続を取ることなく著作物を創作することにより発生し,著作物の複製(コピー)や翻案(一部を変える行為)行為に対して,差止及び損害賠償を請求することができます。但し,身につけるジュエリー作品については,著作権法が保護する美術工芸品にあたるかどうかについて微妙な問題があり,必ずしも全ての作品が著作物とは考えられていません。
そこでジュエリー作品については,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるもの」である「意匠」について,意匠法による保護がメインと考えられます。意匠法による保護を受けるためには,そのジュエリー作品,デザイン画を公表する前に,特許庁に出願して登録を受ける必要があります。
ジュエリー作品(デザイン画)のデザイン(意匠)がオリジナルのものであっても,特許庁に出願する前に,既に同一あるいは類似の意匠が知られていたり(自ら公表した場合もこれにあたります),さらにこれらの意匠に基づいて容易に創作が出来るような意匠については,登録を受けることが出来ません。
意匠登録を受けるための費用については,特許庁のホームページに掲載されていますが,出願1万6000円,登録は第1年から3年までは毎年8500円,第4年から10年までは毎年1万6900円です。また,出願する場合には,専門の弁理士に依頼するのが無難です。その場合の費用については,以前は弁理士会の定めた報酬基準がありましたが,既に廃止されました。ホームページを持っている弁理士については報酬も記載している場合がありますのでそれをご覧下さい。
弁理士会のホームページに平成15年のアンケート調査の結果が掲載されていますが,意匠出願の手数料(図面2枚,特徴記載あり,物品の説明ありの場合)は,平均10万4125円(最低2万円~最高22万5000円),無事登録に至った場合の謝金は平均6万3562円(最低0円~最高15万円)ということでした。また,出願した結果,既に類似の意匠があるとして特許庁からそのままでは登録できないとの通知を受けたときに,それに対する意見書(平均4万9697円)や出願書類を補正する書類(平均4万3762円)を作成する場合等には,別途の費用がかかります。
意匠については,個々の作品毎ではなく,一連の作品に共通する作品の「部分」についても意匠登録を受けることが出来ます。従って,一連のテーマを有する作品群について,意匠が共通する部分がある場合には,その部分について意匠登録を受けることにより,これらの作品群について保護を得ることも出来ます。
意匠登録を受けると,登録の日から20年間,登録意匠,類似した意匠を施した物品の製造,販売等に対して差止及び損害賠償を請求することができます。
以上